有責配偶者からの離婚は認められるか?
夫が不倫をしたと仮定し、その夫から離婚を請求された場合、通常裁判でも離婚は認められません。
では、一体どのような場合に有責配偶者からの離婚が認められるのでしょう。
裁判の判例では、以下の3つの要件をみたしていると離婚請求が認められる場合があるとされています。
①夫婦の別居期間が、同居期間と比べて長期間に及んでいる
②夫婦間に未成熟の子が存在しない
③妻が離婚により精神的・経済的に極めて苛酷(かこく)な状態におかれることがない
3つの要件を詳しくみていきたいと思います
①別居期間
「別居が長期間に及んでいる」とは、具体的に何年以上なのか。
判例では、別居期間が36年、30年、22年、16年と徐々に短縮傾向にあります。
ただし、別居期間10年以下となると事案により判断が異なります。
別居期間8年、夫婦の年齢(夫60歳、妻57歳、子4人成人)同居期間22年に対して、別居期間が相当長期に及んでいないとされたのに対し、
夫が別居後の生活費を負担し、財産分与について誠意ある提案(1億円を上回る)をしている事案(夫52歳、妻55歳、子2人成人、同居期間23年)別居期間8年は相当の長期間に及ぶとされました。
以上の二つの例は、同じような年齢・同居期間・別居期間にも関わらず、裁判所での見解が分かれています。
このことからも、別居期間8、9年が一応の分岐点のようですが、別居期間がそれ以上長くなっても諸事情など総合的にみて、離婚請求が認められなかった判例もあります。
20年間妻以外の女性と同棲しながらも、妻の寛大な態度と貢献により社会的地位を築き、月に何度も帰宅して妻の世話を受けていた夫が、社会の一線を退いた後に求めた離婚請求は棄却されました。
②未成熟子の存在
判例では、未成熟子が存在する場合の有責配偶者からの離婚請求は、概ね否定しています。
ですが、別居期間が長期にわたり、子が高校を卒業する年齢に達していて、夫は別居後に毎月15万円を送金していた事例では、未成熟子が存在していても有責配偶者からの離婚が認められています。この場合、夫の妻に対する経済的給付(解決金など)も期待できるという点が考慮されています。
③苛酷状態(過酷状態)
経済的基盤が不安定で、離婚により生活が困窮する場合には有責配偶者からの離婚が認められません。
ですが、離婚後の生活を補償する資金的援助若しくは、解決金などが予定されている場合には離婚請求が許された判例もあります。
以上3つの要件についてみてきましたが、その他にも「障害をもつ子どもの存在」については、たとえ子が成人に達していても夫からの離婚請求が認められません。
障害の程度にももちろんよりますが、障害が重度で介護が必要な場合には、成人だとしても未成熟子と同じような扱いとなります。
たとえ別居期間が長期にわたっていても、離婚により片方が精神的・経済的に極めて過酷な状況に置かれることが予想される場合には、離婚はできないものとされています。
離婚の要件についてみてきましたが、結論としては、不倫をしている夫からの離婚請求は、
長い別居期間が必要なこと
未成熟子がいないこと
が最低要件になるようです。